米国OAで装置の機能を「方法ステップ」と指摘されて不明確とされた場合の対応

米国出願のOffice Actionでは、装置クレームに装置と方法とが混在しているとして、35 U.S.C. §112(b)に基づき、クレームが不明確とされることがあります。

この35 U.S.C. §112(b)に関連して、MPEP §2173.05(p)では、次のように説明されています。

A single claim which claims both an apparatus and the method steps of using the apparatus is indefinite under 35 U.S.C. 112(b) …

しかしながら、出願人としては、装置が備える機能を限定する意図で記載した処理を、審査官が方法ステップに当たると指摘する場合があります。

この場合、直ちに補正するのではなく、まず、問題となった限定が、

  • 方法ステップが実際に実行されることを要求しているのか
  • その処理を実行する機能を備えた装置を限定しているのか

を確認する必要があります。

本記事では、後者であるにもかかわらず、装置と方法とが混在していると指摘された場合を中心に、反論及び補正のポイントを簡潔に整理します。

先に結論

問題となった限定が、方法ステップの実行ではなく、装置の機能を限定していることが明確であれば、次のように反論することが考えられます。

当該限定は、所定の処理が実際に実行されることを要求するものではなく、その処理を実行する機能を備えた装置を限定するものである。したがって、クレームは装置と方法との双方を請求しておらず、装置クレームとして明確である。

一方、クレーム文言から装置側の機能であることが明確でない場合には、そのことを明確にする補正を検討します。

反論する場合のポイント

例えば、次のような装置クレームを考えます。

a processor configured to:

receive input data;

determine a result based on the input data; and

output the result

この限定が要求しているのは、通常、各処理が実際に実行されることではなく、各処理を実行するよう構成されたprocessorです。

したがって、そのように構成されたprocessorを備える装置であれば、各処理が実際に実行されていない状態でも、クレームの要件を充足し得ます。

反論では、例えば次の点を説明します。

  • クレームは一貫して装置を対象としている
  • 問題となった処理は、クレームされた装置又はその構成要素の機能を規定している
  • クレームは、その処理が実際に実行されることを要求していない
  • 各処理を実行するよう構成された装置であれば、クレームの要件が充足され得る
  • したがって、装置が作られた時点か、処理が実行された時点かによって、クレームの充足時点が不明確になるものではない

MPEP §2173.05(p)も、ユーザによる具体的な行為を要求する限定と、装置が実行する機能を規定する限定とを区別し、後者についてはクレームが明確であり得るとして、MasterMine Software, Inc. v. Microsoft Corp.を挙げています。

MasterMineの装置クレームには、報告モジュールがユーザ選択可能なデータベースフィールドをpresentsし、ユーザから選択をreceivesし、データベースクエリをgeneratesするという記載が含まれていました。Federal Circuitは、これらの記載について、ユーザが所定の操作を実際に行うことを要求するものではなく、報告モジュールが備える機能を規定するものと判断しました。

したがって、クレームに処理を表す動詞が含まれていることだけを理由に、装置と方法とが混在していると判断された場合には、問題となった処理が装置の機能を限定していることを、クレーム全体に基づいて説明することが重要です。

補正する場合のポイント

反論できる場合でも、クレーム文言に曖昧さが残る場合や、早期に拒絶を解消したい場合には、補正が適切なこともあります。

例えば、

the user selects X

という限定が装置クレームに含まれている場合には、発明の内容及び当初明細書のサポートに応じて、

an input device configured to receive a user selection of X

などと変更することが考えられます。

これにより、ユーザが実際に選択することではなく、ユーザによる選択を受け付けるよう構成されたinput deviceを限定していることを明確にできます。

また、複数の処理が列挙されている場合には、各処理がprocessor configured to:に従属することを明確にする方法も考えられます。

別の選択肢として、メモリに記憶された命令とプロセッサが実行する処理との関係を明示するため、

a memory storing instructions that, when executed by a processor, cause the processor to:

に続けて、プロセッサが実行する各処理を列挙する形式も考えられます。

ただし、補正の際には、表現だけでなく、次の点も確認する必要があります。

  • 当初明細書に補正のサポートがあるか
  • 補正によって意図せず権利範囲を変更しないか
  • 先行技術との差異が維持されるか
  • 方法ステップ自体も別の方法クレームとして保護する必要がないか

“configured to”に変更すれば必ず解決するわけではない

configured toは、所定の機能を備える装置として表現するために有用です。ただし、この文言を機械的に加えれば、常に問題が解消するわけではありません。補正後のクレーム全体から、問題となった処理が装置又はその構成要素の機能として規定されていることが明確である必要があります。

configured toの意味、IPXLとMasterMineの詳細及び原文明細書との関係については、別記事「米国特許の装置クレームで“configured to”はどう使うべきか」で解説しています。

§112(f)は別の問題として確認する

ちなみに、processor configured to ...などの機能的な限定については、装置と方法との混在とは別に、35 U.S.C. §112(f)の適用が問題となる場合があります。

§112(f)が適用される場合には、明細書に、クレームされた機能を実行する対応構造、特にコンピュータ実装機能についてはアルゴリズムが開示されているかを確認する必要があります。

この点については、別記事「米国特許では『制御部』をどう書くべきか―means-plus-function(§112(f))から考える」をご参照ください。

まとめ

装置が備える機能を限定したにもかかわらず、方法ステップが混在しているとして§112(b)拒絶を受けた場合には、次の順番で検討します。

  1. 審査官がどの限定を方法ステップと認定したかを確認する
  2. その限定が処理の実行を要求するのか、装置の機能を限定するのかを確認する
  3. 装置側の限定であることが明確なら、そのことを具体的に反論する
  4. 曖昧さが残る場合には、装置側の機能であることを明確にする補正を検討する
  5. 補正時には、サポート、権利範囲、先行技術との差異及び§112(f)も確認する

MPEP §2173.05(p)が引用されたことだけから補正の要否を決めるのではなく、問題となった限定が何をクレーム要件としているのかを確認することが重要です。