米国特許の装置クレームで「configured to」はどう使うべきか ― 判例から考えるドラフティング実務

米国特許の装置クレームでは、構成要素の機能を特定するために、“configured to” という表現がよく用いられます。

例えば、制御装置について、

a controller configured to control the motor …

といった記載です。

一見すると単なるクレーム表現の選択のようにも見えますが、“configured to” について判例を見ていくと、大きく二つの問題を分けて考える必要があるように思います。

一つ目は、

その機能が実際に実行されることをクレーム要件としているのか、それとも、その機能を実行するよう構成された装置をクレームしているのか

という問題です。

例えば、

a controller configured to perform X

という装置クレームについて、Xが実際に実行された場合にのみクレームの要件を満たすのか、それとも、Xを実行するよう構成されたcontrollerであれば、Xが実際に実行されていなくてもクレームの要件を満たすのかでは、大きな違いがあります。

仮に前者であるとすれば、装置を製造しただけではクレームの要件を満たさず、出荷後にユーザがXという機能を実際に実行したときに初めてクレームの要件を満たす、ということにもなり得ます。

これは、装置クレームについて、いつ侵害が成立するのかという問題にも直結します。

二つ目は、

その機能を実行するよう「構成された」というためには、単にその機能を実行可能であれば足りるのか、それとも、その機能を実行するための具体的な構成・設定まで必要なのか

という問題です。

例えば、一般的なcontrollerが、プログラムを書き換えればXを実行できるというだけで、

configured to perform X

という限定を満たすのでしょうか。

それとも、実際にXを実行するためのプログラムや設定などがされている必要があるのでしょうか。

こちらは、先行技術との差異やクレームの権利範囲を考えるうえで重要な問題です。

この二つは似ているようですが、別の問題です。

そこで、本記事では、Federal Circuitの判例を確認しながら、この二つの問題を分けて整理し、現在の米国実務において “configured to” をどのように使うべきかを考えてみたいと思います。

第1の問題 ― 機能の実行を要求するのか、機能を有する装置をクレームするのか

まず考えたいのは、

その機能が実際に実行されることをクレーム要件としているのか、それとも、その機能を実行するよう構成された装置をクレームしているのか

という問題です。

この問題を考えるうえで代表的な判例が、**IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon.com, Inc., 430 F.3d 1377(Fed. Cir. 2005)**です。

IPXL Holdings ― 装置クレームに「ユーザの動作」を入れる問題

問題となったクレーム25には、次のように記載されていました。

The system of claim 2 wherein the predicted transaction information comprises both a transaction type and transaction parameters associated with that transaction type, and the user uses the input means to either change the predicted transaction information or accept the displayed transaction type and transaction parameters.

このように、システムを対象とするクレームでありながら、

the user uses the input means to …

という限定を含んでいました。

Federal Circuitは、このクレームについて、

  • ユーザによる変更・承認を可能にするようにシステムが作られた時点で侵害が成立するのか
  • ユーザが実際にinput meansを使用して変更・承認したときに初めて侵害が成立するのか

が不明確であると指摘しました。

そして、一つのクレームで装置とその装置を使用する方法との双方を請求しているとして、当該クレームを不明確と判断しました。

この考え方は、現在のMPEP §2173.05(p)にも反映されています。

ここで重要なのは、装置クレームに機能を記載してはいけない、ということではない点です。

IPXL Holdingsで具体的に問題となったのは、

the user uses …

という形で、ユーザによる実際の動作の実行を装置クレームの要件としていたことです。

例えば、これに対して、

a controller configured to perform X in response to a user operation …

と記載すれば、ユーザによる動作そのものをクレーム要件とするのではなく、ユーザ操作に応じてXを実行するよう構成されたcontrollerという装置側の限定として記載することができます。

この意味で、“configured to” は装置クレームを記載するうえで有用な表現です。

IPXLの問題をもう少し一般化すると

もっとも、IPXL Holdingsは、ユーザによる動作がクレームに記載されていたという具体的な事案です。

“configured to” が装置クレームで用いられる理由を考えるうえでは、この問題をもう少し一般化して考えることができます。

すなわち、

所定の機能が実際に実行されることをクレーム要件としているのか

それとも、

所定の機能を実行するよう構成された装置をクレームしているのか

という違いです。

例えば、

a controller configured to perform X

という記載であれば、Xという動作が実際に実行されたことそのものではなく、Xを実行するよう構成されたcontrollerをクレームの対象とすることを意図した表現と考えられます。

したがって、“configured to” を使う理由の一つは、所定の機能が実際に実行されることを要求するのではなく、その機能を実行するよう構成された装置をクレームすることにあると考えられます。

もっとも、そのために “configured to” という表現を必ず使わなければならないわけではありません。

MasterMine ― “configured to” は必須ではない

この点で参考になるのが、MasterMine Software, Inc. v. Microsoft Corp.(Fed. Cir. 2017)です。

問題となったシステムクレームには、“presents”、“receives”、“generates”など、実際の動作を表すようにも見える表現が含まれていました。

しかしFederal Circuitは、これらの限定について、ユーザが実際に何らかの行為を行うことを要求するものではなく、クレームされたシステムのcapabilitiesを記載するfunctional languageであると判断しました。

したがって、IPXL型の不明確性はないとされました。

MPEP §2173.05(p)でも、現在、IPXL等と対比する形でMasterMineが紹介されています。

この判例から分かるのは、

装置の機能を限定するために、必ずしも “configured to” という形式を用いる必要はない

ということです。

MasterMineのように、装置の動作を動詞で直接記載した場合であっても、それが装置の機能・能力を特定するfunctional languageとして解釈される場合があります。

In re McFadden ― “configured to” は方法の実行そのものを要求しない

この第1の問題について、“configured to” がより直接的に問題となった最近の判例として、In re McFadden(Fed. Cir. 2025)があります。

なお、本判決は**nonprecedential decision(先例拘束性のない判決)**です。

問題となったクレームには、

a subsystem configured to use the method of …

という限定が含まれていました。

Federal Circuitは、この限定について、subsystemが当該方法を使用することができることを要求するものであって、その方法の各ステップが実際に実行されることを要求するものではないと判断しました。

McFaddenは、この結論を導くにあたり、MasterMineやMicroprocessor Enhancement Corp.(MEC)を引用しています。

したがって、新たな基準を示したというよりも、従来の判例で示されていた考え方を、“configured to” を含むクレームに適用した事例と見ることができます。

この点でも、“configured to” は、ある機能が実際に実行されることではなく、その機能を実行するよう構成された装置をクレームするために用いることができる表現と考えられます。

以上から、第1の問題については、次のように整理できると思います。

装置クレームでは、所定の機能が実際に実行されることを要求するのではなく、その機能を実行するよう構成された装置をクレームすることができます。

“configured to” は、そのことを表現するための有用な表現です。

もっとも、MasterMineが示すように、そのために “configured to” という形式を用いること自体が必須なわけではありません。

第2の問題 ― “configured to” は装置をどこまで限定するのか

次に考えたいのが、

その機能を実行するよう「構成された」というためには、単に実行可能であれば足りるのか、それとも、その機能のための具体的な構成・設定まで必要なのか

という第2の問題です。

例えば、

a controller configured to perform X

というクレームについて、第1の問題との関係では、Xが実際に実行されたことではなく、Xを実行するよう構成されたcontrollerがクレームの対象となります。

しかし、それだけでは、

どのようなcontrollerが「configured to perform X」に該当するのか

は決まりません。

一般的なcontrollerが、プログラムを書き換えればXを実行できるというだけで足りるのでしょうか。

それとも、実際にXを実行するためのプログラムや設定などがされている必要があるのでしょうか。

ここでは、Xが実際に実行されたかどうかは問題ではありません。

問題となるのは、Xを実行するよう構成された装置をクレームするとして、その装置がどの程度Xの実行に向けて構成されている必要があるのかという点です。

この違いは、先行技術との差異を考えるうえでも、権利範囲を考えるうえでも重要です。

この問題を考える参考となるのが、“adapted to” に関する Aspex Eyewear v. Marchon EyewearIn re Giannelli です。

Aspex Eyewear ― “adapted to” は単なる capable of とは限らない

Aspex Eyewear, Inc. v. Marchon Eyewear, Inc.(Fed. Cir. 2012)では、“adapted to” の意味が問題となりました。

問題となったクレーム23には、次のように記載されていました。

said arms and said pair of magnetic members adapted to extend across respective side portions of a primary spectacle frame

Federal Circuitは、“adapted to” について、文脈によっては “capable of” や “suitable for” という広い意味を持ち得る一方、より狭く “made to”、“designed to”、“configured to” といった意味にもなり得ると説明しました。

そして、この事件では、クレームおよび明細書の記載を踏まえて、後者の狭い意味に解釈しました。

ここで興味深いのは、Federal Circuitが “configured to” を、単なる「~することができる」よりも狭い意味を表す言葉として用いていたことです。

つまり、この判例では、概ね次のような対比がされています。

狭い意味: made to / designed to / configured to

広い意味: capable of / suitable for

もっとも、後述するように、ここから「configured to は常に capable of よりも狭い」と一般化することはできません。

In re Giannelli ― 単に「使用できる」だけではない

この考え方は、In re Giannelli(Fed. Cir. 2014)でも確認できます。

この事件では、

a first handle portion adapted to be moved … by a pulling force

というクレーム表現が問題となりました。

USPTOは、先行技術の装置もそのように使用することが可能であるとして拒絶しました。

しかしFederal Circuitは、“adapted to” を単に「そのように使用可能である」という意味には解釈しませんでした。

明細書の記載を踏まえれば、当該装置は、ユーザがハンドルを引くrowing motionによって使用するようdesigned or constructedされたものであると判断しました。

ここでも、単なる「使用可能性」と、その用途・機能のために構成された装置とは区別されています。

Nevro ― “configured to” は文脈によって具体的な意味を持つ

“configured to” 自体が正面から問題となった判例として、Nevro Corp. v. Boston Scientific Corp.(Fed. Cir. 2020)があります。

問題となったクレームには、

a signal generator configured to generate a therapy signal …

という表現が含まれていました。

この事件では、“configured to” について、必要なconfigurationがされていることを要求するのか、それとも、その機能を実行するcapacityがあれば足りるのかなど、複数の解釈が考えられることから、不明確性が争われました。

これに対してFederal Circuitは、クレーム用語について複数のもっともらしい解釈が考えられるというだけで、直ちに不明確になるわけではないとの考えを示しました。

そのうえで、クレームおよび明細書の記載を踏まえて、この事件における

configured to

を、

programmed to

という意味に解釈しました。

特に、明細書の記載を参酌し、

The specifications of the asserted patents confirm that “configured to” requires setting parameters.

と認定したうえで、上記のように結論付けている点は注目に値します。

つまり、単にその信号を生成する能力があるというだけではなく、signal generatorがその信号を生成するようprogrammingされていることを意味すると解釈したわけです。

ここからも、“configured to” の意味は、その言葉だけを取り出して一律に決まるのではなく、クレームや明細書との関係で判断されることが分かります。

In re Blue Buffalo ― “configured to” でも capable of になり得る

そして、この第2の問題について特に注目したいのが、2026年の In re Blue Buffalo Enterprises, Inc. です。

なお、本判決は**nonprecedential decision(先例拘束性のない判決)**です。

この事件では、

the at least one sidewall is configured to be readily deformable by a hand of a user

などの “configured to” / “configured for” の意味が問題となりました。

出願人側は、GiannelliやAspex Eyewearを根拠として、“configured to” は “specifically designed to” のように狭く解釈されるべきであると主張しました。

しかし、Federal Circuitはこの主張を採用しませんでした。

Federal Circuitは、GiannelliとAspex Eyewearで問題となったのは、本件とは異なり “adapted to” であり、さらに、それらの事件ではクレームおよび明細書の文脈が狭い解釈を支持していたことを指摘しました。

これに対してBlue Buffaloでは、“configured to” を “capable of” よりも狭く解釈すべきことを示す十分な記載がないとして、Boardによる “capable of” との解釈を支持しました。

これは、ドラフティング実務上、重要なポイントだと思います。

すなわち、

“configured to” と書けば、それだけで “specifically designed to” という限定が生じるわけではない

ということです。

以上から、第2の問題については、

“configured to” という二語だけから、その装置がどの程度限定されるのかが一律に決まるわけではない

と考えるのがよさそうです。

“configured to” はどう使うべきか

以上の判例を踏まえると、“configured to” を使う際には、やはり二つの問題を分けて考えることが重要だと思います。

第1の問題は、

その機能が実際に実行されることをクレーム要件としているのか、それとも、その機能を実行するよう構成された装置をクレームしているのか

という問題です。

“configured to” は、所定の機能が実際に実行されることを要求するのではなく、その機能を実行するよう構成された装置をクレームするための有用な表現と考えられます。

もっとも、MasterMineが示すように、“configured to” という文言自体がそのための必須条件ではありません。

第2の問題は、

その機能を実行するよう「構成された」というためには、単に実行可能であれば足りるのか、それとも、その機能のための具体的な構成・設定まで必要なのか

という問題です。

この点については、“configured to” という二語だけから答えが決まるわけではありません。

Aspex EyewearやGiannelliでは、クレームや明細書の文脈を踏まえて、単なる使用可能性よりも狭い意味が認められました。

Nevroでは、明細書を踏まえて “configured to” が “programmed to” と解釈されました。

一方、Blue Buffaloでは、“configured to” を “capable of” よりも狭く解釈するための十分な根拠がないとして、広い解釈が採用されています。

したがって、“configured to” という二語だけに依存して、

capable of より狭い

あるいは、

specifically designed to perform the function

という解釈を当然に期待することは難しいと考えられます。

“configured to” は魔法の言葉ではない

以上を整理すると、“configured to” には、少なくとも二つの異なる観点があることが分かります。

まず、

機能の実行そのものではなく、その機能を実行するよう構成された装置をクレームする

という観点です。

この観点では、“configured to” は有用な表現ですが、MasterMineが示すように必須ではありません。

次に、

その「構成された装置」が、どこまでその機能に向けて構成されている必要があるのか

という観点です。

この点については、“configured to” という言葉自体が答えを与えてくれるわけではありません。

NevroやBlue Buffaloが示すように、その意味はクレームや明細書の記載によって変わり得ます。

したがって、実務上重要なのは、

「configured to と書いたから大丈夫」と考えることではなく、その機能を実行する装置として何が要求されるのかを、クレームと明細書の双方から明らかにしておくこと

だと考えます。

“configured to” は、装置クレームをドラフトするための便利な道具です。

しかし、最終的にその意味を左右するのは、その二語だけではなく、クレーム全体と明細書から読み取れる発明の構成です。

重要なのは、原文明細書の作成段階

以上を踏まえると、“configured to” の問題は、米国出願時に英訳者が “configured to” という表現を選択すれば解決する問題ではありません。

特に、第2の問題については、上記の判例に示されるように、“configured to” の意味の解釈がクレームだけではなく、明細書の記載にも左右されます。

例えば、

a controller configured to perform X

と英訳したとしても、原文明細書に「controllerがXを実行できる」という程度の記載しかなければ、そのcontrollerがXを実行するために特別に構成されているとの解釈を当然に期待できるわけではありません。

逆に、controllerがXを実行するためにどのように設定・構成されるのかや、その機能と装置構成との関係が明細書に記載されていれば、“configured to” が単なる実行可能性を意味するものではないことを、クレーム・明細書全体から説明するうえで有利となります。

したがって、米国出願を想定する場合には、英訳の段階だけでなく、日本語明細書を作成する段階から、将来の英語クレームで用いる機能的表現がどのような意味を持つのかを意識しておくことが重要だと考えます。

また、近年では、米国出願用の英文作成にAI翻訳を利用するケースも増えていくと思います。この際、原文明細書に「~するように構成された」と記載されていれば、AIがこれを “configured to” と適切に訳出することも期待できます。

しかし、AIが “configured to” という表現を正確に選択したとしても、原文明細書にその機能と装置の構成との関係が十分に記載されていなければ、翻訳の段階でその問題を補うことはできません。

したがって、AIによって高精度な翻訳が可能になってきた状況においても、米国でどのようにクレームが解釈され得るかを踏まえて、原文明細書と英文との整合性を確認することが重要であると考えています。


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