プリンター本体を購入した後には、インクカートリッジを繰り返し購入する必要があります。カミソリも、本体を一度購入すれば終わりではなく、替刃を継続して購入します。
このように、本体を販売した後に、その本体で使用する消耗品を継続して購入してもらうことで利益を得るビジネスモデルがあります。
一般に「ジレットモデル」や「消耗品モデル」などと呼ばれるビジネスモデルです。
本記事では、ジレットモデルの仕組みと代表的な事例、そしてこのビジネスモデルを採用するときに考えておきたい問題について解説します。
ジレットモデル(消耗品モデル)とは
ジレットモデルは、装置本体を比較的安価に販売することで普及を促し、その後に継続して購入される消耗品から利益を得るビジネスモデルです。
名称の由来としてよく挙げられるのが、カミソリ本体と替刃の組み合わせです。
カミソリ本体を購入したユーザーは、その後も同じ本体を使い続けるために替刃を購入します。
つまり、
本体を販売する
↓
本体を利用するユーザーが増える
↓
消耗品を継続して購入してもらう
↓
継続的な売上・利益につながる
という仕組みです。
本体の販売だけで利益を得ようとするのではなく、本体の普及によって、その後の消耗品市場を形成するところに特徴があります。
ジレットモデルの代表的な事例
ジレットモデルの代表例として分かりやすいのが、プリンターです。
プリンターを使用していると、インクやトナーがなくなります。そのため、ユーザーはプリンター本体を購入した後も、インクカートリッジやトナーカートリッジを繰り返し購入します。
同じような構造は、カミソリ本体と替刃にもあります。
本体を一度販売して取引が終了するのではなく、本体と専用の消耗品を組み合わせることで、ユーザーとの継続的な取引が生まれるわけです。
このほかにも、本体と交換部品、本体と専用材料など、さまざまな製品で同様のビジネスモデルを考えることができます。
重要なのは、「何が消耗品であるか」ではありません。
本体の普及によって、その後に繰り返し購入される製品の市場が形成されることが、このビジネスモデルのポイントです。
なぜ消耗品ビジネスは魅力的なのか
通常の製品販売では、製品を一台販売すると、その取引はいったん終了します。
これに対して消耗品ビジネスでは、本体を購入したユーザーが、その本体を使用している間、消耗品を繰り返し購入することが期待できます。
また、本体を購入したユーザーが増えるほど、その後に消耗品を購入するユーザーも増えていきます。
そのため、本体の販売台数だけを見るのではなく、
「本体を何台販売できるか」から「本体の普及によって、どの程度の継続的な消耗品需要を形成できるか」
という視点で事業を考えられることが、消耗品ビジネスの大きな特徴です。
ジレットモデルには落とし穴もある
もっとも、本体を普及させれば、その後の消耗品市場から自動的に利益を得られるわけではありません。
本体が広く普及すると、それだけ消耗品市場も大きくなります。
そして、その市場が大きくなれば、当然ながら他社にとっても魅力的な市場になります。
例えばプリンターであれば、本体メーカー以外の企業が互換インクカートリッジを販売することが考えられます。
本体メーカーは、製品を開発し、広告や販売活動を行い、多くのユーザーに本体を普及させるためのコストを負担しています。
これに対して、後から消耗品市場に参入する企業は、必ずしも同じ負担をする必要がありません。すでに形成された市場に対して、互換品などを投入することができるからです。
しかも、低価格の互換品が販売されれば、本体メーカーが想定していた消耗品の売上が他社へ流れる可能性があります。
ここに、ジレットモデルの難しさがあります。
本体を普及させた「その後」を考える
したがって、消耗品ビジネスを考える際には、
「どうすれば本体を普及させられるか」
だけでは十分ではありません。
本体の普及によって消耗品市場が形成された後に、
「その市場から、どのように継続して利益を得るのか」
まで考えておく必要があります。
そのための一つの手段になるのが特許です。
ただし、ここでも単純に「消耗品について特許を取ればよい」というわけではありません。
消耗品そのものを特許で押さえるのか、消耗品を収容するカートリッジを押さえるのか、あるいはカートリッジと装置本体とが協働して実現する機能を押さえるのか。
どこについて特許権を取得するかによって、第三者の参入に対して特許が果たす役割は変わってきます。
また、使用済みの純正カートリッジを再利用したリサイクル品については、「特許権の消尽」という別の問題もあります。
これらについて、実際に争われた特許権侵害訴訟をもとに詳しく検討したのが、次の記事です。
