装置クレームに動作の手順を書く実務―“configured to”とIPXL doctrine

米国特許の装置クレームでは、例えば、プロセッサの機能を次のように記載することがあります。

a processor that:
detects A;
obtains B based on the detected A; and
sends the obtained B.

一見すると、それほど不自然なクレームではありません。

しかし、よく見ると、detect → obtain → sendという一連の動作が、順番に記載されています。

ここで一つ疑問が生じます。

このクレームは、detect、obtain、sendという動作を順番に実行する「方法」を規定しているのでしょうか。それとも、detect、obtain、sendという機能を備えた「装置」を規定しているのでしょうか。

前者であれば、detect、obtain、sendという各動作が実際に実行されることがクレームの要件となるようにも読めます。

一方、後者であれば、問題となるのは、processorがこれらの機能を備えているかどうかであり、各動作が実際に実行されることまでは要求されないと考えられます。

この違いは、侵害の成立を考える上でも重要です。

例えば、このようなprocessorを備えた装置を製造・販売した時点で装置クレームの侵害となり得るのでしょうか。それとも、processorが実際にdetect、obtain、sendという一連の動作を実行したときに初めて、クレームの侵害となり得るのでしょうか。

USPTOの審査基準―装置と方法を一つのクレームに記載すると?

この問題について、USPTOの審査基準であるMPEP §2173.05(p)は、装置と方法が一つのクレームに混在する場合について説明しています。

もっとも、装置クレームに動作を表す記載が含まれていること自体が、直ちに問題となるわけではありません。

一方、一つのクレームが、装置と、その装置を使用する方法ステップの双方を要求する場合には、§112(b)上、不明確となり得ます。

なぜ、このようなクレームが不明確になるのでしょうか。

その理由を理解する上で重要なのが、CAFCの IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon.com, Inc. 判決です。

IPXL判決―いつ侵害になるのか分からない

IPXL判決で問題となったのは、システムを対象とするクレームでありながら、その中に、ユーザーが所定の操作を行うことを要求するように読める記載が含まれていたクレームでした。

そのため、システムを作成した時点でクレームのすべての限定が満たされるのか、それとも、ユーザーが実際にそのシステムを使用したときに初めてすべての限定が満たされるのかが明確ではありませんでした。

CAFCは、このように装置とその使用方法を一つのクレームで要求することによって、いつ侵害が成立するのかが不明確になるとして、当該クレームを不明確と判断しました。

MPEP §2173.05(p)も、この問題に関する判例としてIPXL判決を引用しています。

もちろん、IPXL判決で問題となったのは「ユーザーによる操作」であり、冒頭のprocessorによるdetect → obtain → sendという例と同じ事案ではありません。

しかし、ここから実務上重要なポイントが見えてきます。

装置クレームに動作を記載する場合、その動作自体の実行を要求しているのか、それとも、その動作を実行する機能を備えた装置を規定しているのかを明確にすることが重要です。

そこで「configured to」

この区別を明確にするために使いやすい表現の一つが、米国特許の装置クレームで頻繁に用いられる “configured to” です。

冒頭の例を、次のように記載したとします。

a processor configured to:
detect A;
obtain B based on the detected A; and
send the obtained B.

このように記載することで、detect、obtain、sendという一連の動作そのものを「方法」として要求するのではなく、**これらの動作を実行するように構成されたprocessorという「装置」**を規定するものとして、より明確に表現しやすくなります。

つまり、“configured to”は、detect → obtain → sendのような方法的にも見える一連の処理を、装置側の機能・構成として記載するために使いやすい表現です。

なお、“configured to”と記載した場合に、その機能を実行できる能力があれば足りるのか、それとも、その機能を実行するための具体的な構成まで要求されるのかは、別の論点です。

この点については、別記事の**「米国特許の装置クレームで『configured to』はどう使うべきか ― 判例から考えるドラフティング実務」**で詳しく解説しています。

まとめ

装置クレームに、

detect → obtain → send

のような一連の動作を記載したからといって、それだけで不明確になるわけではありません。

重要なのは、その動作の実行自体を要求する方法的な限定なのか、それとも、その動作を実行する機能・構成を備えた装置を限定しているのかを明確にすることです。

MPEP §2173.05(p)とIPXL判決が示しているように、この区別が曖昧になると、「いつクレームのすべての限定が満たされるのか」という問題が生じ得ます。

“configured to”は、このような一連の処理を装置の機能・構成として表現するための、実務上使いやすい選択肢の一つです。