米国特許の装置クレームで「configured to」はどう使うべきか ― 判例から考えるドラフティング実務

米国特許の装置クレームでは、構成要素の機能を特定するために、“configured to” という表現がよく用いられます。

例えば、制御装置について、

a controller configured to control the motor …

といった記載です。

このような表現が用いられる背景の一つには、装置クレームにおいて「装置そのもの」と「その装置を使用する方法」とを混在させないという米国特許実務があります。

MPEP §2173.05(p)では、装置と、その装置を使用する方法ステップとの双方を一つのクレームで請求することは、35 U.S.C. §112(b)の観点から不明確となり得ることが示されています。

この問題を考えるうえで代表的な判例が、IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon.com, Inc.(Fed. Cir. 2005)です。

もっとも、ここから直ちに「装置クレームでは “configured to” を使えばよい」という結論になるわけではありません。

“configured to” のような機能的表現が、装置にどのような限定を与えるのかについても、Federal Circuitでは複数の判例が積み重ねられています。

そこで、本記事では、これらの判例を確認しながら、現在の米国実務において “configured to” をどのように使うべきかを考えてみたいと思います。

IPXL Holdings ― 装置クレームに「ユーザの動作」を入れる問題

まず押さえておきたいのが、**IPXL Holdings, L.L.C. v. Amazon.com, Inc., 430 F.3d 1377(Fed. Cir. 2005)**です。

問題となったクレーム25には、次のように記載されていました。

The system of claim 2 wherein the predicted transaction information comprises both a transaction type and transaction parameters associated with that transaction type, and the user uses the input means to either change the predicted transaction information or accept the displayed transaction type and transaction parameters.

このように、システムを対象とするクレームでありながら、

the user uses the input means to …

という限定を含んでいました。

Federal Circuitは、このクレームについて、

  • ユーザによる変更・承認を可能にするようにシステムが作られた時点で侵害するのか
  • ユーザが実際にinput meansを使用して変更・承認したときに初めて侵害するのか

が不明確であると指摘しました。

そして、一つのクレームで装置とその装置を使用する方法との双方を請求しているとして、当該クレームを不明確と判断しました。

この考え方は、現在のMPEP §2173.05(p)にも反映されています。

ここで重要なのは、装置クレームに機能を記載してはいけない、ということではない点です。

問題なのは、

the user operates …

のように、装置クレームの成立にユーザによる行為そのものを要求してしまうことです。

したがって、装置クレームでは、ユーザの行為ではなく、その機能を実行するように装置がどのように構成されているかという観点からクレームを記載することが考えられます。

例えば、

a controller configured to control the motor …

という表現であれば、「controllerを用いてmotorをcontrolする」という方法ステップを請求するのではなく、そのような機能を有するcontrollerという装置側の限定として記載することができます。

これが、“configured to” が装置クレームで用いられる理由の一つです。

機能的表現そのものが禁止されるわけではない ― MasterMine

IPXLを読むと、装置クレームでは方法を表すような動詞を避け、“configured to” を使う必要があるようにも思えます。

しかし、必ずしもそうではありません。

この点で参考になるのが、MasterMine Software, Inc. v. Microsoft Corp.(Fed. Cir. 2017)です。

問題となったシステムクレームには、“presents”、“receives”、“generates”など、実際の動作を表すようにも見える表現が含まれていました。

しかしFederal Circuitは、これらの限定について、ユーザが実際に何らかの行為を行うことを要求するものではなく、クレームされたシステムのcapabilitiesを記載するfunctional languageであると判断しました。

したがって、IPXL型の不明確性はないとされました。

MPEP §2173.05(p)でも、現在、IPXL等と対比する形でMasterMineが紹介されています。

この判例から分かるのは、

装置クレームでは必ず “configured to” を使わなければならないわけではない

ということです。

重要なのは、“configured to” という特定の形式を使うことではなく、その限定が、クレームされた装置の機能・能力を特定しているのか、それともユーザ等による実際の行為を要求しているのかという点です。

では、“configured to” は装置をどこまで限定するのか

ここで、別の問題が生じます。

例えば、

a controller configured to perform X

と記載した場合、

Xを実行できるcontrollerであればよいのでしょうか。

それとも、

Xを実行するように実際に構成されたcontrollerである必要があるのでしょうか。

この違いは、先行技術との差異を考えるうえでも、権利範囲を考えるうえでも重要です。

この問題を考える参考となるのが、“adapted to” に関する Aspex Eyewear v. Marchon EyewearIn re Giannelli です。

Aspex Eyewear ― “adapted to” は単なる capable of とは限らない

Aspex Eyewear, Inc. v. Marchon Eyewear, Inc.(Fed. Cir. 2012)では、“adapted to” の意味が問題となりました。

問題となったクレーム23には、次のように記載されていました。

said arms and said pair of magnetic members adapted to extend across respective side portions of a primary spectacle frame

Federal Circuitは、“adapted to” について、文脈によっては “capable of” や “suitable for” という広い意味を持ち得る一方、より狭く “made to”、“designed to”、“configured to” といった意味にもなり得ると説明しました。

そして、この事件では、クレームおよび明細書の記載を踏まえて、後者の狭い意味に解釈しました。

ここで興味深いのは、Federal Circuitが “configured to” を、単なる「~することができる」よりも狭い意味を表す言葉として用いていたことです。

つまり、この判例では、概ね次のような対比がされています。

狭い意味: made to / designed to / configured to

広い意味: capable of / suitable for

もっとも、後述するように、ここから「configured to は常に capable of よりも狭い」と一般化することはできません。

In re Giannelli ― 単に「使用できる」だけではない

この考え方は、In re Giannelli(Fed. Cir. 2014)でも確認できます。

この事件では、

a first handle portion adapted to be moved … by a pulling force

というクレーム表現が問題となりました。

USPTOは、先行技術の装置もそのように使用することが可能であるとして拒絶しました。

しかしFederal Circuitは、“adapted to” を単に「そのように使用可能である」という意味には解釈しませんでした。

明細書の記載を踏まえれば、当該装置は、ユーザがハンドルを引くrowing motionによって使用するようdesigned or constructedされたものであると判断しました。

ここでも、単なる「使用可能性」と、その用途・機能のために実際に構成された装置とは区別されています。

Nevro ― “configured to” は文脈によって具体的な意味を持つ

“configured to” 自体が正面から問題となった判例として、Nevro Corp. v. Boston Scientific Corp.(Fed. Cir. 2020)があります。

問題となったクレームには、

a signal generator configured to generate a therapy signal …

という表現が含まれていました。

この事件では、“configured to” について、必要なconfigurationがされていることを要求するのか、それとも、その機能を実行するcapacityがあれば足りるのかなど、複数の解釈が考えられることから、不明確性が争われました。

これに対してFederal Circuitは、クレーム用語について複数のもっともらしい解釈が考えられるというだけで、直ちに不明確になるわけではないとの考えを示しました。

そのうえで、クレームおよび明細書の記載を踏まえて、この事件における

configured to

を、

programmed to

という意味に解釈しました。

つまり、単にその信号を生成する「能力がある」というだけではなく、signal generatorがその信号を生成するようprogrammingされていることを意味すると解釈したわけです。

ここからも、“configured to” の意味は、その言葉だけを取り出して一律に決まるのではなく、クレームや明細書との関係で判断されることが分かります。

In re Blue Buffalo ― “configured to” でも capable of になり得る

そして、この点について特に注目したいのが、2026年の In re Blue Buffalo Enterprises, Inc. です。

なお、本判決は**nonprecedential decision(先例拘束性のない判決)**です。

この事件では、

the at least one sidewall is configured to be readily deformable by a hand of a user

などの “configured to” / “configured for” の意味が問題となりました。

出願人側は、GiannelliやAspex Eyewearを根拠として、“configured to” は “specifically designed to” のように狭く解釈されるべきであると主張しました。

しかし、Federal Circuitはこの主張を採用しませんでした。

Federal Circuitは、GiannelliとAspex Eyewearで問題となったのは、本件とは異なり “adapted to” であり、さらに、それらの事件ではクレームおよび明細書の文脈が狭い解釈を支持していたことを指摘しました。

これに対してBlue Buffaloでは、“configured to” を “capable of” よりも狭く解釈すべきことを示す十分な記載がないとして、Boardによる “capable of” との解釈を支持しました。

これは、ドラフティング実務上、重要なポイントだと思います。

すなわち、

“configured to” と書けば、それだけで “specifically designed to” という限定が生じるわけではない

ということです。

では、“configured to” はどう使うべきか

以上の判例を踏まえると、“configured to” については、二つの問題を分けて考える必要があります。

一つ目は、装置クレームと方法クレームを混在させないことです。

例えば、

the user operates the controller to cause the motor to rotate

のようにユーザの行為そのものを装置クレームに入れると、IPXLの問題が生じ得ます。

これに対して、

a controller configured to cause the motor to rotate

とすれば、ユーザの行為ではなく、controllerの機能としてクレームを記載できます。

この意味で、“configured to” は有用な表現です。

もっとも、MasterMineが示すように、“configured to” を使うこと自体がIPXLを回避するための必須条件ではありません。

例えば、

a controller that determines X

あるいは、

the controller determines X

という表現であっても、それがユーザ等による実際の行為を要求するのではなく、controllerの機能・能力を特定するものであることが明確であれば、直ちにIPXLの問題が生じるわけではありません。

したがって、重要なのは表現の形式ではなく、

クレームされた装置が何をすることができる装置なのかを記載しているのか、それとも、ユーザ等が実際に何かをすることを要求しているのか

という点です。

二つ目の問題は、“configured to” が装置にどの程度の限定を与えるのかです。

Blue Buffaloを踏まえると、“configured to” という二語だけに依存して、

capable of より狭い

あるいは、

specifically designed to perform the function

という解釈を当然に期待することは難しいと考えられます。

したがって、“configured to” を用いる場合であっても、その言葉そのものに過大な意味を期待すべきではありません。

“configured to” は魔法の言葉ではない

以上を整理すると、米国の装置クレームで “configured to” が広く用いられていることには、合理的な理由があります。

IPXL Holdingsが示すように、装置クレームの中にユーザによる方法ステップを直接取り込むと、装置を作った時点で侵害なのか、その装置を実際に使用した時点で侵害なのかが不明確になる可能性があります。

その意味で、機能を装置側の属性として記載できる “configured to” は有用です。

一方で、MasterMineが示すように、装置の機能を記載するために必ず “configured to” を使わなければならないわけでもありません。

さらに、Aspex Eyewear、Giannelli、Nevro、そして2026年のBlue Buffaloを見ると、もう一つ重要なことが分かります。

“configured to” の意味は、その言葉だけでは決まりません。

ある事件では “programmed to” のような具体的な状態を要求するものと解釈される一方、別の事件では “capable of” と解釈されることがあります。

したがって、実務上重要なのは、

「configured to と書いたから大丈夫」と考えることではなく、その機能を実行する装置として何が要求されるのかを、クレームと明細書の双方から明らかにしておくこと

だと考えます。

“configured to” は、装置クレームをドラフトするための便利な道具です。

しかし、最終的にその意味を左右するのは、その二語だけではなく、クレーム全体と明細書から読み取れる発明の構成です。

重要なのは、原文明細書の作成段階

以上を踏まえると、“configured to” の問題は、米国出願時に英訳者が “configured to” という表現を選択すれば解決する問題ではありません。

Blue Buffaloが示すように、“configured to” が単なる “capable of” を超える意味を持つかどうかは、クレームだけでなく明細書の記載にも左右されます。

例えば、

a controller configured to perform X

と英訳したとしても、原文明細書に「controllerがXを実行できる」という程度の記載しかなければ、そのcontrollerがXを実行するために特別に構成されているとの解釈を当然に期待できるわけではありません。

逆に、controllerがどのようなプログラム、処理、構成によってXを実行するのかが明細書に具体的に記載されていれば、“configured to” の意味をクレーム・明細書全体から説明しやすくなります。

したがって、米国出願を想定する場合には、英訳の段階だけでなく、日本語明細書を作成する段階から、将来の英語クレームで用いる機能的表現がどのような意味を持つのかを意識しておくことが重要だと考えます。

これは、AI翻訳を利用する場合にも同じです。

AIが日本語の「~するように構成された」を正確に “configured to” と訳出したとしても、原文明細書にその機能と装置の構成との関係が十分に記載されていなければ、翻訳だけでその問題を補うことはできません。

その意味では、AI翻訳の精度が向上するほど、単に「正しく訳す」ことだけでなく、米国でどのようにクレームが解釈され得るかを踏まえて、原文明細書と英文との整合性を確認することが重要になると考えています。


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単に日本語を英語へ置き換えるのではなく、本記事で取り上げた “configured to” のような米国特許実務特有のクレーム表現についても、原文明細書の記載との関係を確認しながら英文を作成します。

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